9-1 この章のゴール
- ファシリテーションとは何かを自分の言葉で説明できる。
- 「場の空気を整える」基本動作を理解する。
- 問い・沈黙・うなずきが場を動かすことを体感的に理解する。
- 子どもと大人で、ファシリテーションをどう調整するかが分かる。
9-2 ファシリテーションとは「場の交通整理」
① ファシリの目的は「学びと関係性」を生むこと
ファシリテーションは、講義のように「話を届ける技術」ではなく、
参加者の中にある気づき・経験を引き出し、つなぎ合わせる技術 です。
② トレーナーの役割は3つ
- ひらく:安心して話せる雰囲気をつくる
- ひき出す:声をていねいに聞き取り、広げる
- まとめる:共通点・大きなテーマを言語化する
■ トレーナーポイント 「自分が答えを持っている」ではなく 「みんなの答えを一緒に見つける」という姿勢が基本です。
9-3 場の空気を整える:スタートがすべて
① よい場づくりのチェックポイント
- 笑顔・うなずき・あいづちを大きめに。
- 話す人の方向に身体を向ける。
- 「どんな意見も大切にする」前提を言葉で共有する。
- 話したくない子や大人に無理強いしない。
② 空気をあたためる小技
- ペアトーク(30秒ずつ話す)→ 全体へ戻すと声が出やすい。
- 「今日の気分を天気で言うと?」などの軽いチェックイン。
- トレーナー自身が安心している姿を見せる(深呼吸・笑顔)。
9-4 声を引き出す技術:聴き方・リアクション
① 良い聴き方の基本
- 最後まで聞く(途中で言葉をかぶせない)
- うなずき・表情・姿勢で「聞いてるよ」を伝える
- 相手の言葉を復唱する・要約する
② 声を出せない子がいるとき
- ペアで話した内容を「相方が代理で紹介する」方法を使う。
- 手を挙げるかわりに「カード対応」や「絵を見せる」方法も有効。
- 発言者だけが偉い空気にならないよう、聞く姿勢もほめる。
■ トレーナーポイント どんな小さな声でも、大事に拾われた体験は「学びの基礎体験」になります。
9-5 問いで深める:沈黙を味方につける
① 良い問いは「思いを引き出す」問い
- 事実を振り返る(「赤ちゃんはどんな表情だった?」)
- 気持ちを扱う(「どんな気持ちになった?」)
- 理由を問う(「どうしてそう思う?」)
- 未来へつなげる(「これから何を意識したい?」)
② 沈黙の扱い方
- 沈黙=悪いことではない(思考の時間)。
- 3秒〜5秒待つと、誰かが話し出す。
- 固まっているときは「ペアで30秒だけ話そう」と切り替える。
③ 深めるための追加質問
- 「それを聞いて、他に思った人はいる?」
- 「似た経験がある人?」
- 「反対の意見の人はどう思う?」
9-6 子ども・大人で変わるファシリの組み立て
① 小学校(特に2年生)
- 短い言葉で・ゆっくり・繰り返し伝える。
- 質問は「2択」「3択」などで答えやすく。
- 体を動かすワークと静かな時間をリズムよく入れる。
② 中高・大学
- 「価値観の違い」を前提にして対話を設計する。
- グループ対話 → 全体共有が効果的。
- 赤ちゃんとの体験を、自分の人生・将来に結びつける問いを活用。
③ 大人(企業・行政・保護者)
- 実際の行動につながる問いを用意する。
- 対話だけでなく、データ・事例の提示も有効。
- 余白をつくり、感情を話せる雰囲気を作ることが重要。
9-7 ファシリの“よくある失敗と回避策”
① ありがち失敗
- 説明が長くなりすぎる
- 問いの意図が伝わらない
- 意見が出ないと焦って答えを言ってしまう
- 一部の子(または大人)だけが話してしまう
② 回避策
- 説明は「30秒以内」で区切る意識を持つ。
- 問いは1つずつ、短く、明確に。
- 沈黙は“味方”と思い、3秒待つ。
- グループ対話やペアトークで「声の偏り」を防ぐ。
Chapter 9 のまとめ
- ファシリテーションは「場をひらき・ひき出し・まとめる」技術である。
- 安心感が生まれると、子どもも大人も自然と声が出やすくなる。
- 問い・沈黙・うなずきは、場を深くする三大ツール。
- 年齢や対象に応じたチューニングが必要。
- 説明しすぎず、体験と思考を引き出すことがファシリの目的。
次の Chapter 10 では、ファシリの基礎を踏まえながら、
「話し方・聴き方・ファンづくり」 をより実践的に扱っていきます。