8-1 この章のゴール
Chapter 8 のゴールは、次の4つです。
- 「台本」の役割と限界を理解する。
- 基本的な進行フォーマットに沿って、自分で台本を組み立てられる。
- 子どもの学びを引き出す「問い」の種類と使い分けを知る。
- 現場のふりかえりを通して、台本と問いをアップデートする感覚を持つ。
8-2 台本は「安心して飛ぶための滑走路」
① 台本があるメリット
- 緊張しても、最低限伝えるべきことが抜けない。
- チームで共有しやすく、誰が担当しても一定の品質を保てる。
- 現場ごとの「改善点」を書き足していくことで、ノウハウがたまる。
② 台本の「落とし穴」
- 原稿読みになり、子どもや参加者の反応が見えなくなる。
- 想定外の出来事に弱くなる(赤ちゃんの機嫌・子どもの発言など)。
- 台本どおりに進まないと「失敗」と感じてしまう。
③ 目指したい状態
台本を「完璧な答え」ではなく、
安心して場に集中するための「最低限のレール」として扱えること。
その場その場の生きたやりとりを大事にしながら、必要な要素だけは外さない──そのバランスが大切です。
■ トレーナーポイント
・研修の最初は、台本をしっかり書いたほうが安心です。
・慣れてきたら「キーワード台本」に移行していくイメージを持ちましょう。
8-3 赤ちゃん先生クラスの基本フォーマット
1回のクラス(45〜60分)は、大きく次のような流れで構成できます。
- ① オープニング(導入)
自己紹介・今日の目的・ルール共有・場をあたためる。 - ② 赤ちゃんとの出会い
赤ちゃん・ママ講師の紹介、最初のふれあい・観察。 - ③ テーマに沿ったワーク
命・成長・家族・多様性など、その日ごとのテーマに合わせた活動。 - ④ ふりかえり
感じたこと・気づいたことを言葉や絵で表現する。 - ⑤ クローズ
全体のまとめ・家で話してほしいこと・感謝のあいさつなど。
台本づくりでは、まずこの「型」に沿って、
各パートに何分くらい使うか/何をしたいか/どんな問いを投げるかを書き出していきます。
8-4 台本の書き方:セリフ型とキーワード型
① セリフ型台本(初心者向け)
最初のうちは、「だいたいのセリフ」まで書いておいてOKです。
- 例)「みなさん、こんにちは。赤ちゃん先生の○○です。」
- 例)「今日は、みんながどれだけ大きくなったかをいっしょに考える時間です。」
セリフ型のメリット: ・安心感が高い/抜け漏れが少ない デメリット: ・原稿読みになりやすい/アドリブが効きにくい
② キーワード型台本(慣れてきたら)
慣れてきたら、次のような「箇条書き+キーワード」にしていきます。
<例:オープニング>
・自己紹介(名前・エリア・子どもの年齢)
・今日の目的:「自分がどれだけ大きくなったか」
・ルール:赤ちゃんの気持ちを一番に、手を洗う、走らない
・問い:「今日、どんなことが楽しみ?」(2〜3人だけ聞く)
キーワード型のメリット: ・相手の反応を見ながら柔軟に言葉を変えられる ・時間に合わせてカット&調整しやすい
■ トレーナーポイント
・研修では「まずセリフ型で書いてみる → キーワード型に圧縮する」という練習もおすすめです。
8-5 問いの種類と使い分け
① 事実の問い(What)
- 「さっきの赤ちゃん、どんな表情をしていた?」
- 「今、赤ちゃんは何をしていたかな?」
② 気持ちの問い(How / Feel)
- 「それを見て、どんな気持ちになった?」
- 「もし自分が赤ちゃんだったら、どんな気持ちだと思う?」
③ 意味づけの問い(Why)
- 「どうして赤ちゃんは泣くと思う?」
- 「この経験は、これからのクラスにどんな意味があるかな?」
④ 未来の問い(Next)
- 「明日から、クラスでどんなことを意識してみたい?」
- 「お家の人に、今日のことをどうやって伝えてみる?」
1回のクラスの中で、
事実 → 気持ち → 意味 → 未来 の順に問いを重ねていくと、
子どもたちの内側で理解が深まりやすくなります。
8-6 年齢・対象別の問いのチューニング
① 小学校低学年
- 短く・具体的に・選びやすく。
- 「うれしい・かなしい・びっくりした」など、選択肢を出しながら聞く。
- 全体に聞く前に、ペアや近くの友だちと話してから共有させると出やすい。
② 中高・大学
- 「なぜそう思う?」「それはどんな経験から?」と一歩深める問いを使う。
- 価値観が分かれる問い(働き方・性別役割・家族観など)も扱っていく。
- 少人数グループでの対話 → 全体共有の順番が効果的。
③ 大人(企業・保護者・地域)
- 自分の具体的な行動・選択につながる問いを意識する。
- 「あなたの職場/家庭ならどうですか?」と現場に引き寄せる。
- 過去の成功・失敗体験を思い出してもらう問いを使う。
■ トレーナーポイント
・同じ台本でも、問いのレベルを調整するだけで「子ども版/大人版」にアレンジできます。
・対象ごとに「鉄板の問い」を3つずつ持っておくと、現場でかなり安心です。
8-7 ふりかえりから台本をアップデートする
① 現場後にメモしておきたいこと
- うまくいった問い/あまり反応がなかった問い。
- 時間配分(どこで時間が足りなくなったか)。
- 子どもや参加者の印象的な言葉。
- ママ講師や先生からのコメント。
② 台本のどこを更新するか
- 問いの順番を入れ替える。
- 説明が長すぎた部分を削り、ワークの時間を増やす。
- 反応が良かった例え話・エピソードを追記する。
③ チームで台本を共有する
- エリアの共有フォルダなどに、最新版台本を保存する。
- 誰かが改善したら、「ver.2」「ver.3」と履歴が分かる形にしておく。
- ロープレ研修や勉強会で、お互いの台本を見せ合う。
Chapter 8 のまとめ
- 台本は、「その場で自由に動くための滑走路」であり、原稿読みにするためのものではない。
- 赤ちゃん先生クラスは、オープニング → 出会い → ワーク → ふりかえり → クローズの基本フォーマットで設計できる。
- 問いには、事実・気持ち・意味・未来などの種類があり、組み合わせと順番が学びの深さを左右する。
- 年齢や対象に応じて、問いのレベルや言葉をチューニングすることが大切である。
- 現場のふりかえりを通して、台本と問いを少しずつアップデートしていくことで、プログラムの質が高まっていく。
次の Chapter 9 では、ここで設計した台本と問いを「実際の場でどう扱うか」という視点から、
ファシリテーション基礎 をさらに深めていきます。