赤ちゃん先生 トレーナー研修テキスト

Chapter 7 対象別プログラム設計

この章では、赤ちゃん先生プログラムを「対象別」にどう設計し分けるかを整理します。
中高・大学・企業・行政・高齢者施設・保護者向けなど、年齢や立場が変わっても、
「変えてはいけない軸」と「変えてよい部分」 を見極めて設計できることがゴールです。

7-1 この章のゴール

Chapter 7 のゴールは、次の4つです。

  1. 赤ちゃん先生の「共通する骨格」を言語化できる。
  2. 対象によって「ねらい」と「表現」を変える視点を持つ。
  3. 中高・大学・企業・高齢者施設など、主要な対象の特徴を理解する。
  4. 自分のエリアで新しい対象が出てきても、ゼロから悩まずに設計できる。

7-2 どの対象にも共通する「骨格」

まずは、対象に関わらず共通している「赤ちゃん先生の骨格」を整理します。

① 共通する3つの要素

  • 赤ちゃんの存在:言葉以前のコミュニケーション・命のリアリティ。
  • ママ講師のストーリー:子育て・働き方・生き方のリアルな語り。
  • 参加者のふりかえり:自分の生活・仕事・将来に引き寄せる時間。

② 変えてはいけない「ねらいの軸」

  • 命の大切さ・尊厳を体感する。
  • 相手の立場に立って考える「エンパシー(共感力)」を育てる。
  • 人と人がつながり、社会をつくる「社会力」の入り口を体験する。

③ 変えてよい「表現の部分」

  • 使う言葉・事例・問いかけの難易度。
  • ワークの形式(個人/ペア/グループ/ロールプレイなど)。
  • 扱うテーマ(進路・キャリア・子育て・介護・地域づくりなど)。

■ トレーナーポイント
「対象が変わると、全部別物のプログラムを作らないといけない…」と捉えると大変です。
あくまで共通の骨格+対象に合わせたチューニングというイメージを持ちましょう。

7-3 中高・大学向けプログラム

① 対象の特徴

  • 将来の進路・仕事・家族像を考え始める時期。
  • 自分の価値観と、親や社会の価値観との間で揺れやすい。
  • 「照れ」や「カッコつけ」が強く、素直さを出しづらいことも多い。

② ねらいの例

  • 「働くこと」「家族を持つこと」「生きること」をセットで考える。
  • 子育て・仕事・地域との関わり方に、多様なモデルがあることを知る。
  • 将来の自分像を考えるときの「選択肢」を増やす。

③ プログラム構成イメージ

  1. 導入:簡単な自己紹介とアイスブレイク。 「10年後の自分」をテーマにしたミニワークなど。
  2. 赤ちゃんとのふれあい・観察。 「今この瞬間の命」に触れる体験。
  3. ママ講師のストーリー。 ・就職・結婚・出産までの葛藤 ・働き方を選び直した経緯 など。
  4. グループ対話。 「自分はどんな大人になりたい?」をテーマにシェア。
  5. ふりかえり・メッセージカード作成。

■ トレーナーポイント
・説教にならないよう、「こうしなさい」ではなく「あなたはどう思う?」という問いを大事に。
・キャリア教育・性教育・命の教育など、学校のカリキュラムとのつながりを意識すると、採用されやすくなります。

7-4 企業・行政向けプログラム

① 対象の特徴

  • 普段は「成果」や「効率」を軸に働いている。
  • 仕事モードのままだと、最初は赤ちゃん先生に戸惑うこともある。
  • 子育て世代・独身・管理職など、立場の異なる大人が混ざる。

② ねらいの例

  • ワーク・ライフ・バランスではなく、「ワーク・ライフ・インテグレーション」の視点を持つ。
  • 多様な働き方・生き方への理解と、職場でのコミュニケーション改善。
  • 管理職には、部下のライフイベントを支える視点を持ってもらう。

③ プログラム構成イメージ

  1. 導入:ママハタ・赤ちゃん先生の紹介。 企業側のねらい(ダイバーシティ・人材育成・メンタルヘルス等)との接続を明示。
  2. 赤ちゃんとのふれあい・観察。 「今ここ」に集中する時間をつくる。
  3. ママ講師のストーリー。 ・出産後の働き方の葛藤 ・職場に支えられた/支えられなかった経験 など。
  4. 個人ワーク+グループ対話。 「自分の職場でできる小さな一歩は?」を考える。
  5. ふりかえり・上司や組織に伝えたい一言をまとめる。

■ トレーナーポイント
・企業向けでは、「感動」で終わらせず、必ず「行動」に落とす問いを用意する。
・事前に担当者と、ねらいとゴール(行動変容)をしっかりすり合わせておくことが大切です。

7-5 高齢者施設向けプログラム

① 対象の特徴

  • 身体機能・認知機能の個人差が大きい。
  • 「誰かの役に立てている感覚」を求めていることが多い。
  • 昔話・子育ての記憶が引き出されやすい。

② ねらいの例

  • 世代間交流を通して、生きがい感・自己肯定感を高める。
  • 自分の経験や知恵を次の世代に手渡す機会をつくる。
  • 施設職員が、ご利用者の新しい一面を知るきっかけにする。

③ プログラム構成イメージ

  1. 導入:赤ちゃんとママ講師の紹介。 高齢者の方が安心して参加できるよう、ゆっくり・はっきりと説明。
  2. ふれあいタイム。 ・抱っこ(可能な場合) ・手をにぎる/なでる など、無理のない範囲で。
  3. 昔話タイム。 「あなたの子育ての頃はどんな時代でしたか?」などの問いから話を引き出す。
  4. 子どもたち(参加する場合)やママ講師との対話。
  5. ふりかえり・写真撮影など。

■ トレーナーポイント
・安全面・衛生面の配慮を念入りに。施設職員と事前にしっかり打ち合わせを。
・時間よりも「お一人おひとりを丁寧に扱う」ことを優先する設計が向いています。

7-6 保護者・地域向けプログラム

① 対象の特徴

  • 子育ての当事者であり、同時に地域社会の一員でもある。
  • 「自分の家庭のことで精一杯」と感じている人も多い。
  • 子ども同士・親同士・地域とのつながりを求めている層もいる。

② ねらいの例

  • 「一人で頑張らなくていい」というメッセージを伝える。
  • 子育てを「社会とつながる入り口」として再定義する。
  • ママハタ・赤ちゃん先生を通して、新しいつながりを生む。

③ プログラム構成イメージ

  1. 導入:ママハタの紹介と、「子育てと働き方」に関するミニレクチャー。
  2. ママ講師のストーリーシェア。 「私も一人で頑張りすぎていた時期があって…」など。
  3. グループ対話。 ・子育てで嬉しかった瞬間 ・大変だったけど乗り越えた経験 など。
  4. 赤ちゃんとのふれあい/赤ちゃん先生プログラムの紹介。
  5. ふりかえり・今後のつながりの案内(LINEグループ・地域イベントなど)。

■ トレーナーポイント
・「正しい子育て」を教える場にならないよう注意。
・参加者同士が「分かるよ」「それ私も」と言い合えるような、安心と共感の場づくりを意識しましょう。

7-7 オンライン・ハイブリッド開催のポイント

状況によっては、オンラインやハイブリッドで赤ちゃん先生を実施することもあります。
対面と同じことはできないからこそ、「オンラインならでは」の設計が必要です。

① 大事にしたいこと

  • 赤ちゃんの様子が見えやすいカメラ位置・音声環境。
  • 一方的な視聴ではなく、チャットやリアクションで参加できる工夫。
  • 画面越しだからこそ、言葉の説明をていねいに。

② オンライン用アレンジ例

  • 事前にワークシートを配布しておき、画面共有しながら一緒に書き込む。
  • ブレイクアウトルームでの少人数対話を取り入れる(中高・大学・企業向け)。
  • 短時間×複数回に分けて実施する(子どもや高齢者の集中力に配慮)。

■ トレーナーポイント
・「オンラインだからできない」と諦める前に、「オンラインだからこそ届く人」に目を向けてみましょう。
・安全面・個人情報保護の観点から、録画や画面キャプチャの扱いは事前にルールを確認しておくことが必要です。

Chapter 7 のまとめ

  • 赤ちゃん先生には、「赤ちゃんの存在」「ママ講師のストーリー」「参加者のふりかえり」という共通の骨格がある。
  • 対象ごとに変えるのは「言葉・ワーク・扱うテーマ」、変えないのは「ねらいの軸」。
  • 中高・大学・企業・高齢者・保護者など、それぞれの特徴とねらいを押さえることで、提案しやすくなる。
  • オンライン・ハイブリッド開催でも、「つながり」「エンパシー」「社会力」という核を大切にすることが重要である。

次の Chapter 8 では、これらのプログラムを実際に形にしていくための、
打ち合わせ・営業・広報・当日運営の実務 について整理していきます。