赤ちゃん先生 トレーナー研修テキスト

Chapter 6 5回シリーズ:ねらいと進行構成

この章では、小学校向け5回シリーズの各回について、
「ねらい」「ベースとなる流れ」「トレーナーが気をつけるポイント」を整理します。
台本を丸暗記するのではなく、なぜその順番なのか/どこが外せないのか を理解することがゴールです。

6-1 この章のゴール

Chapter 6 のゴールは次の4つです。

  1. 5回シリーズ全体のストーリーラインを説明できる。
  2. 各回の「ねらい」と「キーフレーズ」を理解する。
  3. 基本の進行構成(フォーマット)を押さえる。
  4. 現場に合わせて「足し引き」する視点を持つ。

6-2 5回シリーズ全体の流れ

5回シリーズは、子どもたちの「世界の見え方」が少しずつ広がっていくように設計されています。

  1. 第1回:自分の成長と「大切に育てられてきた自分」に気づく。
  2. 第2回:命の不思議・生まれてきたことの尊さを知る。
  3. 第3回:赤ちゃんから「人として大切なこと」を学ぶ。
  4. 第4回:一人ひとりの違いと多様性(ユニバーサル)を考える。
  5. 第5回:ふりかえりと「これからの自分」の一歩を描く。

自分 → 命 → 他者 → 社会 → 未来 という順番で “輪が広がる” イメージを持っておくと、構成がつかみやすくなります。

6-3 第1回:自分はどれだけ大きくなったかな

① ねらい

  • 自分の成長をふりかえり、「大切に育てられてきた自分」に気づく。
  • 赤ちゃんの存在と自分とを“連続した命”として感じ始める。

② 基本構成(45〜60分のイメージ)

  1. オープニング・自己紹介(トレーナー・ママ講師・赤ちゃん)
    今日何をするのか、“優しい空気” をつくる時間。
  2. 自分の成長をふりかえるワーク
    ・生まれた時の身長・体重を聞いてくる宿題
    ・「○歳のときにできるようになったこと」を思い出す など
  3. 赤ちゃんと自分の大きさの比較
    赤ちゃん人形や実際の赤ちゃんの大きさと、自分の手足を比べてみる。
  4. ふりかえり・クローズ
    「今日気づいたこと」「ママや家の人に伝えたい一言」を書く/話す。

③ トレーナーポイント

  • 「できる/できない」ではなく、「ここまで大きくなった」という視点を繰り返し強調する。
  • できるだけ楽しい雰囲気で、自分の話をしやすい場をつくる。
  • 最後に、「あなたたち自身が大事に育てられてきた命なんだよ」というメッセージを忘れずに。

6-4 第2回:命の不思議・生まれてきたこと

① ねらい

  • 命がどのようにつながってきたか、イメージを持つ。
  • 自分が生まれてきたことに感謝や喜びを感じるきっかけをつくる。

② 基本構成

  1. 前回のふりかえり
    「お家の人に何か聞けた?」「何か話してみた?」などを共有する。
  2. 命のリレーの話
    祖父母 → 親 → 自分 → 未来へと続く命のつながりを、イラストや簡単な図で伝える。
  3. 生まれた日のストーリー(ママ講師の話)
    ・陣痛のときの気持ち
    ・生まれた瞬間に感じたこと など
  4. 子どもたち自身の「生まれた日」ワーク
    ・家で聞いてきたエピソードをシェアする
    ・「こんなふうに生まれてきた自分」などを絵や言葉で表す
  5. ふりかえり・クローズ

③ トレーナーポイント

  • 重くなりすぎないよう、希望や温かさのあるストーリーの伝え方を工夫する。
  • 家庭事情に配慮し、「話したくない子」に無理をさせない。
  • 一人ひとりの「生まれてきた意味」を大切に扱う姿勢を示す。

6-5 第3回:赤ちゃんから学ぶ「人として大切なこと」

① ねらい

  • 赤ちゃんの姿から「人として大切なこと」を感じ取る。
  • 共感・思いやり・優しさを、具体的な行動として考える。

② 基本構成

  1. 赤ちゃん観察タイム
    赤ちゃんの表情・声・しぐさを、じっくりと見る時間。
  2. 観察したことを言葉にする
    「どんな表情をしていた?」「今どんな気持ちだと思う?」など。
  3. ママ講師の話
    ・赤ちゃんが泣いているときの気持ち
    ・困っているとき、嬉しそうなときの様子 など。
  4. グループで話し合う
    「自分たちのクラスで、赤ちゃんみたいに大切にしたいことは?」
  5. ふりかえり・クローズ

③ トレーナーポイント

  • 「かわいい」で終わらせず、「そこから何を学べるか」を一緒に言葉にする。
  • クラスの具体的な場面(いじめ・からかい・無視など)に触れるときは、責めるトーンではなく「どうしたらよかったかな?」という問いで扱う。
  • 赤ちゃんの姿を、“人間の原点” として紹介することで、子どもたちの自己イメージも上がりやすくなる。

6-6 第4回:みんなちがって みんないい(ユニバーサル)

① ねらい

  • 一人ひとりが違っていてよい、という感覚を育てる。
  • 障害・個性・文化など、多様性を否定しない姿勢を身につける。

② 基本構成

  1. これまでのふりかえり
    第1〜3回で感じたことを簡単に振り返る。
  2. 「違い」について考える導入
    ・背の高さ・得意なこと・好きなもの など、身近な違いから。
  3. 赤ちゃんの違いに目を向ける
    ・泣き方・笑い方・成長のペース など。
  4. ユニバーサルの話
    「困っている人が困らなくなる工夫」をみんなで考えてみる。
  5. グループワーク
    「クラスをもっと居心地よくするには?」をテーマにアイデア出し。
  6. ふりかえり・クローズ

③ トレーナーポイント

  • 特定の子を指して「違う」扱いにならないよう、配慮する。
  • “かわいそうな人” としてではなく、「それぞれに得意・苦手がある」というニュアンスで話を進める。
  • 赤ちゃんの個性を「その子らしさ」として紹介することで、多様性の話に自然につなげる。

6-7 第5回:みんなの未来・ふりかえり

① ねらい

  • 5回の学びをふりかえり、自分の言葉でまとめる。
  • これからのクラスのあり方・自分の行動を考える。
  • ママ講師・赤ちゃんへの感謝とメッセージを形に残す。

② 基本構成

  1. 5回のふりかえり
    印象に残った回や言葉を共有する。
  2. ワーク:自分の成長をふりかえる
    ・「前と比べて変わったこと」
    ・「これからやってみたいこと」など。
  3. ママ講師からのメッセージ
    赤ちゃんと一緒に、このクラスへのメッセージを伝えてもらう。
  4. お手紙・メッセージづくり
    ママ講師や赤ちゃんへのお手紙、クラスとしてのメッセージボードなど。
  5. クローズ
    「いのち」「やさしさ」「違い」「未来」について、一言ずつシェアして終える。

③ トレーナーポイント

  • 「テストのまとめ」ではなく、「自分の人生へのメッセージ」としてふりかえりを扱う。
  • ママ講師にも、この5回を通して感じたことを言葉にしてもらう。
  • クラス担任の先生が一言話せる時間を確保し、学校としてのメッセージも伝えてもらう。

6-8 現場に合わせたカスタマイズの視点

5回シリーズは、「型」があるからこそ、現場に合わせてアレンジが可能です。

① 時間が短いとき

  • 導入・説明は最小限にし、「体験」と「ふりかえり」に時間を残す。
  • ワークは1つに絞り、その分じっくり扱う。

② 学級の雰囲気に応じて

  • 発言が多いクラス:対話やシェアの時間を多めに。
  • 静かなクラス:書くワークやペアトークから始める。
  • トラブルが多いクラス:第3・4回を少し厚めに扱うなどの調整も有効。

③ トレーナー用チェックリスト

  • このクラスにとって、今一番大事な「ねらい」はどこか。
  • そのねらいを達成するために、どのワークは必須か。
  • 削るとしたら、どこを削っても本質がぶれないか。

Chapter 6 のまとめ

  • 5回シリーズは、「自分 → 命 → 他者 → 多様性 → 未来」というストーリーで構成されている。
  • 各回には明確なねらいがあり、順番にも意味がある。
  • トレーナーは、台本よりも「ねらい」と「子どもの変化」にフォーカスして設計・進行する。
  • 現場に合わせてアレンジしつつも、外してはいけない“核”を見失わないことが大切である。

次の Chapter 7 では、小学校以外の中高・大学・企業・行政・高齢者向けなど、
対象別プログラム設計について整理していきます。