赤ちゃん先生 トレーナー研修テキスト

Chapter 5 小学校向けプログラムの全体設計

この章では、赤ちゃん先生の中核となる「小学校プログラム」の全体像を整理します。
1回開催と5回開催の構成、各回のねらい、学年特性、場づくり、プログラム設計の基本を扱います。
ここを押さえると、他の年齢向けプログラムにも応用がきく “設計の型” が身につきます。

5-1 この章のゴール

Chapter 5 のゴールは次の4つです。

  1. 小学校向けプログラムの全体像を説明できる。
  2. 1回開催と5回開催の違いを把握し、開催先に応じて提案できる。
  3. 小学校2年生が中心である理由(発達段階)を理解する。
  4. 各回の「ねらい」「ストーリー」「問い」を自分の言葉で語れる。

5-2 小学校プログラムの位置づけ

赤ちゃん先生プログラムは、さまざまな世代向けに展開していますが、 その中心に位置するのが **小学校向け** プログラムです。

① 小学校は「価値観の土台」がつくられる時期

  • 自他の違いに気づき、共感力の芽が育つ時期。
  • 命の実感に出会う機会がほとんどない。
  • 学校という「小さな社会」で、自分の役割を模索している。

② 「赤ちゃん」という存在が響く時期

「かわいい」「守りたい」という気持ちが素直に出やすく、 赤ちゃんからの刺激をもっとも自然に受け取れる年代です。

5-3 学年特性:なぜ2年生が中心なのか

赤ちゃん先生の多くは、小学校2年生を対象に実施されています。 その理由は “発達段階” にあります。

① 小2の「自己と他者の発達」

  • 自分の気持ちを言葉で表現できるようになる。
  • 他者の感情を想像できるようになる(共感の芽)。
  • 小1ほど不安定ではなく、小3ほど「照れ」が強くない。

② 赤ちゃんへの自然な関わり

  • 素直に関われる最後のタイミング。
  • 学級としてのまとまりが出てくる。
  • 赤ちゃんを見ることで「自分もこうやって育ってきた」と実感しやすい。

5-4 1回開催と5回開催の違い

① 1回開催(45〜60分)

ねらい:赤ちゃんとふれあい、いのちの温度や他者へのまなざしを体験する。

  • 短時間で「心が動く」体験をつくる。
  • ふれあい・対話・赤ちゃんの紹介が中心。
  • 学校側の負担が少なく、導入に向いている。

② 5回開催(総合学習 5コマ)

ねらい:赤ちゃんとの関わりを軸に、自己理解・他者理解・社会性を体系的に育てる。

  • ストーリーがあるため、子どもの変化が大きい。
  • ふりかえりや記録を通して、成長を可視化しやすい。
  • トレーナーがもっとも力を発揮できるプログラム。

5-5 5回シリーズの構成とねらい

5回シリーズは、子どもたちが少しずつ“世界の見え方”を広げていくためのストーリーです。

① 第1回:自分はどれだけ大きくなったかな

  • 自分の成長をふりかえる。
  • 大人に大切に育てられてきたことに気づく。
  • 赤ちゃんの小ささと、自分の「大きさ」を比べる。

② 第2回:命の不思議・自分が生まれたこと

  • 命がつながってきた歴史を知る。
  • 生まれた日の話(パパ・ママの気持ち)を扱う。
  • 「自分は生まれてきてよかった」と実感を育てる。

③ 第3回:赤ちゃんから学ぶ「人として大切なこと」

  • 泣く・笑う・手を伸ばすなど、赤ちゃんの姿からメッセージを読み取る。
  • 共感・思いやり・優しさの実践。

④ 第4回:みんなちがって みんないい(ユニバーサル)

  • 自分と違う人がいてもいい。
  • 障害・個性・文化などを“否定しない姿勢”を育てる。
  • 赤ちゃんを見る視点を「人間全体」へ広げる。

⑤ 第5回:みんなの未来・ふりかえり

  • 5回の学びをまとめる。
  • 自分ができる優しさ・行動を考える。
  • ママ講師・赤ちゃんへのメッセージ作成。

5-6 プログラム設計の基本:問いと体験の組み合わせ

良いプログラムは、「問い」と「体験」の組み合わせでできています。

① 問いの例

  • 「この赤ちゃんは今、どんな気持ちかな?」
  • 「自分が赤ちゃんだったころ、どんな風に育てられてきたと思う?」
  • 「もしクラスにいろんな人がいたら、どうすれば仲良くできる?」

② 体験の例

  • 抱っこ・おむつ替えの見学。
  • 赤ちゃんの表情を観察するワーク。
  • ママ講師との対話(お産の話・子育ての話)。

③ トレーナーの役割

  • 場の空気をやわらかくする。
  • 照れている子にも参加しやすい問いを投げる。
  • 子どもの小さな変化を言葉にして返す。

5-7 開催先への提案ポイント

学校に提案するときに押さえておくべきポイントです。

  • 学活・道徳・総合的な学習の時間に組み込める。
  • 「いのち」「共感」「多様性」などカリキュラムとの整合性を示す。
  • 1回だけの実施でも効果があるが、5回だと“成長が見える”。
  • 学級担任の先生の負担を最小限にする運営設計を明確にする。

5-8 まとめ

  • 小学校向けは赤ちゃん先生の中核となるプログラム。
  • 小2が最も赤ちゃんと自然に関われる発達段階。
  • 1回開催は導入向け、5回開催は変化が大きい本格版。
  • 問いと体験の組み合わせがプログラムの質を決める。
  • トレーナーは、子どもの変化を“言葉にして返す”ことが大切。