赤ちゃん先生 トレーナー研修テキスト

Chapter 4 トレーナーの役割総論

この章では、「トレーナーとは何をする人なのか?」を、
団体内・現場・ママ講師・社会との関係から整理していきます。
自分の立ち位置と役割がクリアになるほど、迷いが減り、安心して現場に立てるようになります。

4-1 この章のゴール

Chapter 4 のゴールは、次の4つです。

  1. トレーナーの役割を「4つの視点」で説明できる。
  2. 自分はどの役割に強みがあるか、自己認識できる。
  3. どこまでが自分の守備範囲で、どこからが本部・他メンバーの役割かを理解する。
  4. 現場で起きる迷いやモヤモヤを、役割の整理で言語化できる。

「良い人」ではなく、「役割がクリアなプロのトレーナー」として立つための土台を整えます。

4-2 トレーナーをとらえる4つの視点

トレーナーの役割は、一言では言い表せません。
このテキストでは、次の4つの視点から整理します。

  1. 教育者:学びの場を設計し、ファシリテートする人
  2. コーディネーター:人と人、場と場をつなぐ人
  3. 伴走者:ママ講師や参加者の成長に寄り添う人
  4. 社会起業家の一員:ママハタのビジョンを地域で具体化する人

自分はどの視点が得意で、どこをこれから伸ばしたいのか。
読み進めながら、ぜひ自分ごととしてチェックしてみてください。

4-3 教育者としてのトレーナー

まずは、もっともイメージしやすい「教育者」としての役割です。

① 学びの場をデザインする

  • ゴール(どんな変化を生みたいか)から逆算して、内容・順番・時間配分を組み立てる。
  • 講義だけでなく、ワーク・対話・ふりかえりなど、体験を組み合わせる。
  • 参加者の特性(年代・経験・人数・雰囲気)に合わせて、その場で微調整する。

② 「教える人」ではなく「引き出す人」

赤ちゃん先生のトレーナーは、「正解を教える先生」ではありません。
参加者の中にすでにある経験や気づきを、問いかけと場づくりを通して引き出していく存在です。

  • 一方的な説明よりも、「あなたはどう感じますか?」という問いを大事にする。
  • 発言が少ない人にも、さりげなく参加しやすい場をつくる。
  • 答えを急がせず、「もやもやしたまま考え続けてもいい」という安心感を届ける。

③ 教育者としてのチェックポイント

  • ゴールは具体的に言語化されているか。
  • 話す:聞く:体験する のバランスはどうか。
  • 終わったあと、「何が変わったか」を本人が自覚できるような設計になっているか。

4-4 コーディネーターとしてのトレーナー

トレーナーは、現場に立つだけでなく、人と人・場と場をつなぐ「調整役」でもあります。

① 関係者マップを描く

一つの赤ちゃん先生クラスには、たくさんの関係者が関わっています。

  • ママ講師・赤ちゃん・家族
  • 学校の先生・企業担当者・施設職員
  • ママハタ本部・地域の仲間・行政・メディア など

トレーナーは、「誰が、何を期待して、この場に関わっているのか」を意識しながら、
それぞれが力を発揮しやすいように、事前・当日・事後のコミュニケーションを整えます。

② 伝言ゲームにならないようにする

  • 大事なことは、必ず「文書+口頭」で確認する。
  • ママ講師まかせにせず、開催先との条件はトレーナーも把握しておく。
  • 不安や変更が出たときに、誰がどこまで対応するのかを明確にする。

③ コーディネーターとしての「ひと言」

  • ママ講師へ:「何か不安なことがあったら、遠慮なく教えてくださいね。」
  • 開催先へ:「当日は、こんな雰囲気の時間にしたいと思っています。」
  • 本部や仲間へ:「こういう声が現場から出てきています。」

■ トレーナーポイント
コーディネーターとしての役割は、「全部自分で抱える」ことではありません。
「誰と、どこを、どう分担するか」を整理し、必要な人につなぐことです。

4-5 伴走者としてのトレーナー

トレーナーは、ママ講師や受講生の「一歩」を応援する伴走者でもあります。

① ママ講師の伴走

  • 初めての現場に立つママ講師の不安を言語化させる(何が不安?)。
  • 準備段階から「できていること」に目を向けてもらう。
  • 終わったあと、「ここが良かった」「次はここを一緒にやってみよう」と具体的にフィードバックする。

② 受講生の伴走

  • 研修中に出てきた「気づき」が、日常に戻ってからも続くように、宿題や問いを渡す。
  • 「100点を目指す」のではなく、「まずこの一歩から」というチャレンジを一緒に考える。
  • 次に会ったときに、「あの後どうでしたか?」と声をかけて、変化を一緒に喜ぶ。

③ 「評価する人」ではなく「応援する人」として

伴走者としてのトレーナーは、
誰かを一方的に査定する人ではなく、
一緒に走りながら、タイミングよく「給水」と「声援」を送る人です。

■ トレーナーポイント
自分が話す量よりも、「相手が話した量」を意識してみましょう。
伴走者としての関わりが増えるほど、現場の主体者が育っていきます。

4-6 社会起業家の一員としてのトレーナー

ママハタは、「子育て中のママたちによる社会起業家集団」としての側面も持っています。
トレーナーは、その一員として、ビジョンと現場をつなぐ役割も担います。

① 「点の開催」を「線」と「面」にする

  • 単発のクラスで終わらせず、継続開催や別プログラムにつなげる。
  • 学校と地域、企業と地域など、「別々の点」をゆるやかにつないでいく。
  • 現場で見えたニーズや変化を、本部や仲間に共有し、団体全体の学びにする。

② 「売り込み」ではなく「共に創る提案」をする

社会起業家としての姿勢は、
何かを「買ってもらう」ことよりも、
「一緒に新しい価値をつくりませんか?」と問いかけるスタンスです。

  • 先方の課題や願いを丁寧に聞く。
  • そのうえで、「赤ちゃん先生でお役に立てる部分」を一緒に考える。
  • 無理に広げるのではなく、相手とママハタ双方にとって無理のない形を選ぶ。

③ 自分のまちで「赤ちゃん先生文化」を育てる

トレーナーは、「自分のまちの赤ちゃん先生アンバサダー」とも言えます。
一つひとつの現場での関わりを通して、少しずつ地域の文化や空気を変えていく存在です。

■ トレーナーポイント
「何件開催したか」だけでなく、
「この地域で、どんな変化が生まれてきているか」という視点も持ってみましょう。

4-7 役割の境界線と、チームで動くということ

トレーナーの役割を広くとらえすぎると、「全部自分がやらなきゃ」と苦しくなってしまいます。
逆に狭くとらえすぎると、「ただ現場で話す人」で終わってしまいます。
そこで大事になるのが、役割の境界線です。

① トレーナーの守備範囲(例)

  • 自分が担うこと:研修設計・当日のファシリ・ママ講師への伴走・現場での判断。
  • 本部と相談すること:料金設定・契約・メディア対応・新しい企画の立ち上げ。
  • 仲間と分担すること:受付・記録・託児・広報・フォローイベントなど。

② 「一人でやらない」ためのひと言

  • 「ここから先は、一度本部と相談してみますね。」
  • 「この部分は、エリアの仲間と一緒に考えてもいいですか。」
  • 「私はこの役割をやるので、ここをお願いしてもいいですか。」

③ チームで動くからこそ、続けられる

赤ちゃん先生は、トレーナー一人の力で成り立つプログラムではありません。
ママ講師・本部・地域の仲間・開催先の担当者など、たくさんの人の協力で場が成り立っています。

「一人で頑張る」のではなく、
「チームで育てるプロジェクト」としてとらえることで、
無理なく、長く、楽しく続けやすくなります。

4-8 ミニワーク:私の「得意な役割」「これから伸ばしたい役割」

最後に、4つの視点をもとに、自分の現在地を整理するワークです。

所要時間目安:個人作業 5〜10分 / ペアまたはグループシェア 各1〜2分

① シート例

  • 教育者として:得意なこと/もう少しチャレンジしたいこと
  • コーディネーターとして:得意なこと/苦手だと感じること
  • 伴走者として:やってみたい関わり方/まだ不安なこと
  • 社会起業家の一員として:自分のまちで叶えたい未来・動いてみたいアイデア

② シェアのポイント

  • できていない部分を責めるのではなく、「ここを伸ばしたい」という宣言として語る。
  • 聞き手は、「それいいね!」と思ったところを具体的に伝える。
  • 出てきたアイデアは、エリアミーティングなどで共有し、チームの挑戦として育てていく。

Chapter 4 のまとめ

  • トレーナーの役割は、「教育者・コーディネーター・伴走者・社会起業家の一員」という4つの視点から整理できる。
  • 自分の強みとこれから伸ばしたい役割を把握することで、無理なく役割を広げていける。
  • 役割の境界線を意識することで、「一人で抱え込む」状態から抜け出しやすくなる。
  • トレーナーは、ママハタのビジョンと現場をつなぐ「翻訳者」であり、「場づくりのプロ」である。

次の Chapter 5 では、トレーナーが実際に現場で使う、
ファシリテーション・話し方・聴き方の基本について、より具体的に見ていきます。