1-1 この章のゴール
Chapter 1 のゴールは、次の3つです。
- ママの働き方応援隊(ママハタ)が「何のために存在している団体なのか」を説明できる。
- なぜ「赤ちゃんが先生」なのかを、自分の言葉で語れる。
- その理念を、トレーナーとして現場の行動に結びつけてイメージできる。
ここが腹落ちしているかどうかで、話す内容の説得力も、クラス全体の空気感も大きく変わります。
1-2 ママハタの4つの軸(モットー / ビジョン / ミッション / クレド)
ママの働き方応援隊には、活動の「コンパス」になる4つの軸があります。
それが、モットー・ビジョン・ミッション・クレドです。
① モットー(座右の銘)
私たちは偉大なことはできません。
偉大な愛で小さなことをするだけです。
大きなことを一気に成し遂げるのではなく、
目の前の小さな場面に愛を込めて関わること。
それが、ママハタの活動のスタンスです。
■ トレーナーポイント
モットーは「読み上げる儀式」ではなく、
受講生一人ひとりの「行動宣言」として扱う意識で伝えましょう。
② ビジョン(めざす社会像)
日本の「無縁社会」をなくす。
同じ属性の人だけが集まり、価値観の違う人と出会えない社会。
マンションのドアを閉めたら、隣の人の顔も知らない暮らし。
そんな「無縁社会」を解消することが、ママハタのビジョンです。
赤ちゃん先生は、赤ちゃんを真ん中に置くことで、
世代も立場もバラバラな人たちをもう一度つなぎ直す取り組みです。
③ ミッション(私たちの使命)
子育て中がデメリットではなく、
「子育て中だからこそできる働き方」を創る。
日本では、出産をきっかけに多くの女性が仕事を離れてしまう現状があります。
それは制度の課題でもあり、「かわいい時期のわが子と一緒にいたい」という
自然な願いの表れでもあります。
ママハタは、その両方を前提に、
子育て中だからこそ価値になる働き方 を社会に提案していく団体です。
■ トレーナーポイント
「子育て中でも働ける」ではなく、
「子育て中だからこそ社会に届けられる価値がある」という言い換えを意識しましょう。
④ クレド(行動指針)
クレドは、ママハタの価値観を「具体的な行動の軸」にしたものです。
-
赤ちゃんのまっすぐな瞳のように
先入観やラベルで人を見ず、毎回「はじめまして」のつもりで目の前の人を見る。 -
赤ちゃんのやわらかい肌のように
相手の背景を想像しながら、硬く批判するのではなく、やわらかい姿勢で関わる。 -
赤ちゃんの好奇心いっぱいの動きのように
トラブルもチャンスも、「学びの材料」として捉え、動きながら考える。
■ トレーナーポイント
クレドは「暗記テスト」ではなく「現場でのチェックリスト」。
迷った時に戻る“心のホームポジション”として紹介すると伝わりやすくなります。
1-3 赤ちゃん先生誕生物語とママハタの原点
赤ちゃん先生プロジェクトは、最初からきれいに設計されたビジネスモデルではなく、
現場の試行錯誤から生まれた実践の積み重ねです。
① 子連れ出勤という実験
- 前理事長の孫が待機児童になったことが、すべてのはじまり。
- 「じゃあ一緒に職場に連れてきたら?」という実験的な子連れ出勤。
- ブログで発信すると、「自分も子連れで働きたい」という声が全国から届き、ニーズの大きさに気づく。
② 事業内保育所の設置と葛藤
- 行政の提案を受けて、事業内保育所をつくる。
- 保育士が子どもを見ている間に、ママたちは別室で仕事をするスタイルに。
- しかし、「保育料の負担」や「子どもと離れて働く形」に違和感を覚えたママたちが、次々に離れてしまう。
ここで見えてきたのは、
「預けられること」だけがママの幸せではない という事実でした。
③ 引きこもり青年と赤ちゃんの出会い
- 事業内保育所で、行政からの委託により、引きこもり状態だった若者2人をインターンとして受け入れる。
- 最初は人前でうまく話せなかった彼らが、赤ちゃんとの関わりを通して、少しずつ表情と行動を変化させていく。
- やがて社会復帰につながる姿を目の当たりにし、「この赤ちゃんの力を仕事にできないか」と考えるようになる。
こうした経緯から、2011年に「赤ちゃん先生プロジェクト」が誕生しました。
■ トレーナーポイント
ストーリーを「正確に暗記する」よりも、
・どんな課題があったのか
・赤ちゃんの存在が何を変えたのか
を、自分の言葉で語れることを意識しましょう。
1-4 なぜ「赤ちゃんが先生」なのか
ママハタが大事にしているのは、赤ちゃんの「かわいさ」だけではありません。
赤ちゃんの存在が持つ社会的な力です。
① エンパシー(共感力)を呼び起こす存在
- 赤ちゃんは言葉ではなく、表情や泣き声、しぐさで自分を表現しています。
- 周りの大人は「この子は今、何を感じているんだろう?」と自然に想像しようとします。
- このやりとりが、「相手の気持ちを想像する力=エンパシー」を育てていきます。
② 社会力(人と人が社会をつくる力)を引き出す
社会力とは、「人と人がつながり、協力しながらよりよい社会をつくっていく力」です。
赤ちゃん先生クラスでは、
- 赤ちゃん
- ママ講師
- 子どもたち・生徒
- 高齢者や企業の社員
といった、普段は出会いづらい人たちが、同じ場に集まります。
そこで交わされる対話やまなざしの交換を通して、
「人と人が社会をつくる感覚=社会力」が育まれていきます。
1-5 トレーナーとしての「ストーリー」を持つ
トレーナーの言葉に説得力を持たせるのは、肩書きや資格だけではありません。
「なぜ自分が赤ちゃん先生に関わりたいのか」という、自分自身のストーリーです。
ミニワーク:あなたの「赤ちゃん先生ストーリー」
所要時間目安:記入 10分 / シェア 1人あたり 1分
次のような項目で、自分のストーリーを整理してみましょう。
- 名前・活動エリア・家族構成
- 子どもが生まれてから変わった「価値観」
- 働き方について一度あきらめかけたこと
- ママハタ・赤ちゃん先生に出会ったきっかけ
- このプロジェクトを通して、どんな未来をつくりたいか
■ トレーナーポイント
・1人あたり1分で話す練習を行うと、どの現場でも自己紹介しやすくなります。
・「かわいそうなストーリー」で終わらせず、
「だから私はこう動こうと思った」で締める構成を意識しましょう。
・受講生同士がストーリーを聞き合うことで、
「自分も動いていいんだ」という感覚が生まれます。
Chapter 1 のまとめ
- ママハタのモットー・ビジョン・ミッション・クレドは、「無縁社会を終わらせる」という一本の軸でつながっている。
- 赤ちゃん先生は、子育て中のママの「働きにくさ」から生まれた、現場発の解決策である。
- 赤ちゃんは、人の心をやわらかくし、世代や立場を超えて人をつなぐ「エンパシーの力」を持っている。
- トレーナーの仕事は、「理念を語る人」ではなく、「理念を現場の行動に翻訳する人」である。
次の Chapter 2 では、この理念をもとに、
無縁社会・子育て・働き方をめぐる具体的な社会課題を整理していきます。